Project story 01

カーボンニュートラルの最適解へ導くグリーンモビリティフォーラム

持続可能な社会の実現に向け、企業はさまざまな施策に取り組んでいる。社用車をガソリン車から電気自動車(EV)へ変更する動きは、その一つだ。しかしながら、EVが普及途上にある日本では、社用車をEVへ切り替えることに躊躇してしまう企業も少なくない。どのようにしたらEVの魅力を発信し、普及させていくことができるのか。三菱オートリース(MAL)の若手社員を中心に、新たなプロジェクトが動き出した。


※内容は2024年の取材当時のものです

Project member

T.S.

環境モビリティ推進部環境モビリティ企画課兼 環境モビリティ推進課 リーダー

2016年キャリア入社

東京都出身で、学生時代はフットサルサークルに所属。現在は2児の父として、休日は家族で公園へ出かけることが多い。

A.F.

環境モビリティ企画課兼 未来推進室 リーダー

2009年新卒入社

愛知県出身で、学生時代は軽音学部に所属。最近は料理することに熱心で休日は家族や友人に料理を振る舞っている。

S.T.

環境モビリティ推進部環境モビリティ企画課兼 環境モビリティ推進課

2015年キャリア入社

宮城県出身で、学生時代は美術部に所属。昔から興味があったデザインについては、独学で習得した。

Background

EV導入の壁を、どのように乗り越えるか

カーボンニュートラルを目指す企業にとって、社用車をEVにすることは、重要な選択肢の一つとなっている。だが、数百から数千台の社用車を導入する企業は、変更を検討するだけでも多くの時間を要してしまうため、結果として車両選定時に試乗を行わず、それまで使い慣れた車を選ぶということも少なくなかった。そうした状況下では、EVという新たな車両を選ぶことは難しい。本プロジェクトに当初から関わるA.F.はこう話す。

A.F.

「一般家庭でのEVは徐々に普及が進んできていますが、社用車でのEV導入については、不安を抱えているお客様が多くいらっしゃいます。また個人で車を購入するときとは異なり、法人のお客様が社用車の選定に多くの時間を割くことは難しいのが現実です。しかしヒアリングをしてみると、多くのお客様が『一度、あのEVに乗ってみたい』『社用車のEV導入についてもっと知りたい』と思っていることも分かりました。お客様が感じている“不安“を”安心”に変えることができれば、EVを導入しやすいのではないかと思いました」

そこで開催したのが、国内外のさまざまなEVメーカーを集結させて乗り比べができる試乗イベント「グリーンモビリティフォーラム」である。マルチブランドを展開する三菱オートリースの強みを活かした試乗会で、まるで展示会のように、さまざまなメーカーのEVに触れることができる。2022年5月に第1回のグリーンモビリティフォーラムを開催し、これまで年に2〜3回ほどのペースでイベントを行ってきた。

A.F.

「私たちがこだわってきたことのひとつが、イベントの運営を自分たちで行うということです。専門のイベント制作会社に依頼する方法もありましたが、多くのコストがかかってしまいますし、何より社内にイベント開催に関するノウハウが蓄積されません。自分たちでイベント運営することで、ある程度、自由に表現でき、取り扱うEVやサービスへの理解も深まります。社員みんなで作り上げるイベントなので団結力も高まりました」

初めのうちは集客に苦しんだものの、回を重ねるごとに来場者を増やすことができた。そして2024年秋には、7回目のグリーンモビリティフォーラムを開催するに至った。これまで蓄積してきたイベント開催のノウハウを活かしつつ、より多くの企業にEVの魅力を伝えていきたい。そこでイベントのリーダーを任されたのが、T.S.だった。

Process

カーボンニュートラルの最適解をMALっと(まるっと)体験

イベントの開催に向け、まず決めなければならないのが、「開催日・場所」と「コンセプト」である。2024年秋に、とある自動車メーカーの新型EV発売が予定されていたことから、発売日当日をイベント開催日に決めた。試乗コースも「景観が良く、来場しやすい場所」で候補地を選び、東京・お台場のイベント会場を押さえ、“日本でいちばん早く、公道試乗ができる”というアピールを行った。

T.S.

「過去6回イベントを開催してきて、やり方にも慣れてきていたので、開催日と場所については比較的スムーズに決めることができました。一方で苦労した点は、コンセプトの策定と、お客様にイベントを楽しんでいただくための施策です。これまで通り試乗会を行っているだけでは、同業他社との差別化を図ることは難しくなってしまいます。その議論に多くの時間を割きました」

社用車としてのEV導入は、単に自動車だけをリースすれば良いというものではない。車に付帯する保険やEVの充電機器、運転管理サービスなど、多岐にわたる情報が必要となり、それらを総合的に判断して契約に至る。イベントへ訪れた際に、EVに試乗するだけではなく、必要な情報を一から知ることができれば、EV導入のハードルを下げることができるのではないか。そこで企画されたのが「カーボンニュートラルの最適解をMALっと(まるっと)体験」というコンセプトだった。

T.S.

「EVの車種を選ぶことだけが、お客様にとっての選択肢ではありません。“カーボンニュートラルに向けて何が最適解なのか”という情報をお客様に提示し、グリーンモビリティフォーラムを通じて次世代モビリティの可能性を感じていただくことが大事なのではないかと考えました。EVメーカーはもちろんですが、それ以外のEVにまつわるサービスを提供する企業にも集まってもらい、そのサービスを“まるっと”知ることができるイベントにしました」

また来場者に“イベントを楽しんでもらう”というのも、重要なポイントである。多くの企業が参入するEV市場では、日々さまざまなイベントが開催されているが、差別化は容易ではない。「三菱オートリースのグリーンモビリティフォーラムは面白い」。環境モビリティ推進部のメンバーたちは、そんなイメージを持ってもらいたかった。そこで本イベントのデザインリーダー・PR担当を任されたのがS.T.。学生時代からイラストやデザインが好きで、社内でもデザイン領域の仕事を行っていた。クリエイティブな仕事に適した人材だった。

S.T.

「お客様はEVのサービスを知ることが目的で来ていますが、イベント自体が面白くなければ、記憶に残すことはできません。まずは視覚的にイベントを楽しんでもらうために、のぼりや手土産、テーブルクロスなどを自分でデザインして制作しました。またチームでスタンプラリーを企画し、スタンプを全部集めたお客様に、オリジナルグッズをプレゼントする施策では、MAPを兼ねたスタンプラリーカードと、グッズのデザインも行いました」

Result

想像を超える反響

迎えた第7回グリーンモビリティフォーラムの当日。三菱オートリースは、イベントを主催する環境モビリティ推進部だけではなく、他部署のメンバーも含めた28名体制で会場の設営にあたった。イベントが始まり、時間が経つにつれてどんどんと増えていく来場者たち。スタンプラリーも功を奏し、来場者の多くがEV以外のサービスブースにも足を運んでいた。T.S.たちの予想を超える反響だった。

S.T.

「イベントの準備段階では、『本当にスタンプラリーを回ってくれるだろうか?』と、正直不安な思いもありました。しかし実際は、熱心に会場を回っていただく方もいらっしゃり、スタンプラリーを通してイベントを楽しんでいただける結果となりました。デザインに力を入れて良かったです」

用意されたブースの装飾品やグッズは、ほとんどがS.T.のオリジナルデザインである。三菱オートリースの“社内デザイナー”として、来場者の満足度向上に大きく貢献した。

またコンセプトである「カーボンニュートラルの最適解をMALっと(まるっと)体験」も、狙い通りだった。来場者からは「EV車の充電器や関連するサービスの説明ブースなどもあり、今後自社でできることを考えるきっかけにもなりました」「メーカーの垣根を超えた展示がコンパクトにまとめられており、大変回りやすく勉強になりました」など、イベントを高く評価する声が多数聞かれた。来場者数も、当初の予測の2倍近くにもなっていた。

T.S.

「実際、このイベント後にEV導入を決めてくださったお客様もいました。MALは“モビリティサービス企業への進化”を志しており、このグリーンモビリティフォーラムは、その一翼を担うものであると考えています。このイベントをきっかけに、EV導入を検討するお客様が増えてくれたら嬉しいです」

Future

さらなるチャレンジが続いていく

大盛況だった第7回グリーンモビリティフォーラム。三菱オートリース社内でも認知度が高まり、イベント開催のノウハウも蓄積されてきた。早くも次に向けた動きが始まっている。

A.F.

「オートリース会社が自分たちでイベントを立ち上げ、運営することは珍しいことかもしれません。もちろん開催までは苦労もありましたが、事故もなく無事に完了できたことで大きな達成感を得ることができました。今後はこのグリーンモビリティフォーラムを、さまざまな地域で、多くのパートナーと協力しながら、全国のお客様に安心を提供していきたいと考えています」

S.T.

「次回以降も、これまでにない視点で物事を考えていきたいと思っています。『まずはグリーンモビリティフォーラムに行ってみよう』と思うお客様が増えるような施策ができたら良いですね。私たちは自前でイベントを企画しているので、その特徴を活かして、面白い企画にチャレンジしたいです」

T.S.

「グリーンモビリティフォーラムは、開催することがゴールではなく、実際にEV導入を検討していただくことが目標となります。そうした意味では、もっとイベントを楽しんでいただけるような、新しい施策が必要です。まだまだ構想段階ですが、今後はライブ配信やAR、プロジェクションマッピングを活用しデジタルと融合したイベントにも挑戦してみたいです」

カーボンニュートラルの実現を目指す企業に向け、T.S.たちはEVの魅力・サービスをこれからも伝えていく。三菱オートリースは、そうした機会を自分たちの手で生み出している。

アセット 3